ストーリー
先祖に北ヨーロッパの血を持つがゆえに、美しい銀の髪を持つ少年、妃宮千早。だがその容姿は好奇の的となり、そしてその伶俐さゆえに打ち解けず人を拒み、不登校となってしまう。そんな千早を見かねた母親は、最後通牒として転校して違う学校に通うよう言い渡す……だがしかし、そこは、親族が運営するお嬢さま女学院だった ! !
侍女であり、幼なじみである史と共に無理矢理送り込まれた学院の女子寮……そこで千早は、薫子という少女と運命的な出逢いをする。
どんなことにも真っ正直にぶつかっていく【薫子】
そして世を拗ね、高みから物を見るような 【千早】
互いに影響し合い、反目し合いながらも、千早と薫子は奇妙な友情で結ばれていく。そんな中、ふたりはエルダー候補に祭り上げられてしまい…! !
果たして、彼は無事に学園生活を送ることが出来るのか ! ?そして新しい出逢いは千早をどう変えていくのか?
今度はちょっぴりビターでスラップスティックな <女装潜入ファンタジー>
新しい物語が、いま再び開幕します。
用語辞典

聖應女学院 SEIO Jogakuin Christian Education
明治一九年、日本の近代化にあわせ、女性にもふさわしい教養を学ぶ場が必要だという理念に基づき、旧鏑木財閥によって創立された。イギリスのパブリックスクールを原型としており、基督教的なシステムを取り入れた教育様式は現在まで連綿と受け継がれている、いわゆる『お嬢さま学校』である。戦後再建時にプロテスタントからカソリックに改宗、幼稚園から女子短期大学までの一貫教育施設となるが、その基本的なスタイルは現在も変わらない。
慈悲と寛容をモットーとし、年間行事にはボランティア活動や基督教礼拝など、宗教色も色濃い。それに加えて日本的な礼節・情緒教育も行われているため、普通の義務教育機関とはいささか趣が異なる点が多い。生徒の自主性を尊重するため、服装規定等校則もゆるいが、エルダー制度などを見て解る通り、生徒内自治がある程度効果を上げており、大幅な校則違反はほぼ見受けられることはない。それだけに、若干世間から隔絶した感もある。

エルダー制度 Elder sister award
書いて字の如く「Elder sister/一番上のお姉さん」という意味で、「全校生徒の頂点に立つ生徒」と云う意味合いがある。学院生活に於いては「エルダーシスター」では些か長いので、日本人らしく文意を無視して「エルダー」と呼ばれるようになっている。
手本となる最上級生を生徒達自らが選出するという民主的なシステムで、年一回六月の末に発表される。生徒会役員が前期役員の指名推薦プラス信任制で決定されるのに対して、エルダーは全生徒の支持によって誕生し、その発言力は時に現職の生徒会長をすら凌駕する。また、エルダーに選出されるには総有効票数の七五パーセント以上というとんでもない得票数が必要で、達しない場合は空席となる。従来は生徒会長が並立で擁されることが多い。ただ、得票者が他の得票者を支持することによってその人物の持つ得票自体が支持した相手に加算されるといった、独特のシステムも存在するため、エルダーが空席になる場合はそれほど多くないのである。加えて通常の生徒会選挙と違い、学院内ではエルダーに対する関心が極めて高いため、選挙活動や事前の広報活動は全く必要がないほどであることも大きい。
エルダーとして選出された生徒は、七月から卒業までの間全校生徒から「お姉さま」と尊敬を込めて呼ばれることになる。これまた奇妙な話だが、同学年である最上級生達もやはり呼び方は「お姉さま」である。
ま、それこそが「Elder sister」と呼ばれる由縁ではあるのだが。

学生寮 dormitory(residence of cherry-blossoms)
もうすぐ築百年とも噂される、由緒ある学生寮である。創立当初、聖應は全寮制であり、その当時には同じ建造物が四つ存在していた。建物の形が同じである為に、その門前に異なる植物を植えて区別したと云われている。それに因み、五つの寮はそれぞれが椿館、榎館、楸館、柊館と呼ばれるようになった。後に生徒増員の為にもうひとつ櫻館が建てられ、最終的に寮の数は五つになった。
そして戦後、時代の変化に従って全寮制も廃止され、また建物自体の老朽化もあって、寮の数は時代と共に減少していった。現存するのは最後に建てられた櫻館ただ一館のみであるが、それ故に櫻館という名称は既に使われていない。現在の名称は聖應女学院女子寮である。
度重なる改修により、建物は今もしっかりとしている。浴場や厨房、洗濯室等は内装、設備共に最新のものとなったが、昔の建物らしく今では見掛けることも少なくなったセントラルヒーティングが採用されており、その歴史の一端が感じることが出来る。

受付嬢 receptionist
聖應女学院には不思議な慣わしが存在する。「淑女たる者、呼ばれておいそれと出ていくものではない」と云う箴言?に従い、他クラスからの呼び掛けには直接応えてはならないというものだ。ここで登場するのが受付嬢という特殊な役回り。他クラスからやって来た生徒は、まず受付嬢に話し掛け、そこから希望の生徒を受付嬢に呼び出して貰う、若しくは案内して貰うというシステムになる。
慣習から、この役割はクラスの席右前方……つまり、教壇側出入り口に最も近い席に座っている生徒が担当することになっている。勿論その彼女にしてもいつもクラスに居るわけではないから、その時はその周囲の席に座る生徒が代理として用件を仲介することになる。
必然的に各クラスの受付嬢は学院内の人間関係に精通することになる。その情報力たるや「受付嬢が集まれば、判らないことはひとつもないのではないか」と学院内で云われている程である。

二つ名 another name
学院内での有名人に贈られる通り名…と云うか、いつの間にか「そう呼ばれるようになっている」名称のこと。通例だと、薫子の「ナイトの君」のように「○○の君」と云うのが学院内では一般的だが、茉清の「王子さま」や雅楽乃の「御前」といった呼び名も、やはり二つ名である。

生徒会 student council
聖應女学院の生徒会は、生徒会長、副会長、書記、会計の四名からなっている。実質的な業務をするには人数が足りず、色々な場面で生徒の協力を仰ぎつつ業務を執行している。選挙制を取っているエルダー制度とは異なり、こちらは前年度役員による指名推薦及び信任制を取っている。被指名者が推薦を諸事情で辞退した場合には、臨時で役職を受けたり、新入生から新たに役員を補充する場合もある。(前作の烏橘可奈子や、今作に登場する立花耶也子などがそこに該当する)この場合は、生徒総会に於いて臨時の信任投票を行うことになっている。
風紀委員会 disciplinary committee
学内の風紀の乱れを取り締まる委員会ではあるが、聖應女学院に於いて、その活動は活発とは云えない。そもそも服装規定が緩い上に、お嬢さま学校であるが故なのか、わざわざ破ろうという生徒がほとんど存在しない。ただ、近年は携帯電話などの携行物が増えたので、学内での使用を取り締まるという活動は行われているようだ。(学院内では、始業時より放課までは携帯電話並びにメールは使用禁止)また校則上、風紀取り締まりの権限は生徒会に集約しているため、風紀委員の委員長と副委員長は、毎年会長と副会長が兼任している。

学生食堂 refectory
学校の食堂と侮る無かれ、料理の質は市井のレストランと同じか少し劣る程度である。お嬢さま学校である故だろうか、価格は通常の学食よりも僅かに上回る程度。但し置かれているメニューが他とは異なるものが多いので、価格を比較しづらいという部分もある。
お手軽サンドウィッチからビーフシチュープレートまで、種々様々なメニューがあるが、唯一汁ものの麺類は存在しない。制服への跳ねを考慮したものと思われる。常時提供されているメニューは総て洋食であり、和食はA・B二種類の日替わりランチでしか提供されていないなど、色々と他の食堂とは異なる部分も存在する。
カフェテリア cafetelia
学生食堂から階段を上がり、吹き抜け二階にあるのがカフェテリア。こちらはカウンターで提供される軽食(ホットケーキやクロワッサンサンド等)と飲み物、売店と自動販売機、それと若干のテーブル席で構成されている空間で、軽食カウンターと売店の営業は夕方四時半まで。授業のない日は休業。

創造祭 school festival
聖應女学院で十一月に行われる学院祭。新入生、二年の各クラス(最上級生クラスの参加は任意)と、各部活動、同好会による模擬店や展示、活動発表が行われる。中でも名物と云われているのは演劇部による公演と、生徒会主催で行われる各種イベントである。
聖應演劇部はコンテストでも毎回高い演技力を評価されており、活動成績に対して寛容な聖應に於いては特異な存在で、過去の鬼部長の教えが未だに活きているのだと云われている。一方の生徒会主催イベントは生徒たちのリクエストによって決められており、ここ数年はエルダーを主人公にした演劇をリクエストされるのが通例となっていて、どちらも高い人気を誇っている。

修身室 moral training room
修身とは、旧制学校時代に存在した教科のひとつで、孝行・柔順・勤勉などを徳目として教育していた授業。第二次大戦以降は廃止されたが、聖應では情緒教育の一環として、現代に適合する部分を残して発展させたものを選択授業として行っている。現在はいわゆる行儀作法を指導するのがおおよその目的なのだが、本来は各家庭で教えられていたものだったが時代も変わり、そういった家が少なくなってきているために、授業内容も一昔前に較べると初歩的に、また幼稚になった感は否めない。
修身室とはそのために作られている畳敷きの和式教室であるが、それ以外にも、和室の必要な茶道部や華道部によっても利用されている。

図書室 library
学習参考書や古典文学、辞書辞典ばかりしか置かれていないかと思いきや、思ったよりも内容の充実している、学校施設としてはかなり大型の図書室である。生徒からのリクエストなどを受け付けて偏りの出ない品揃えを目指しているが、文庫本は扱わないという規則の為、少年・少女小説の類が一切取り扱い不能となっており、それがいつでも論争の火種に。数年に一度は生徒総会で論題として上がり、その度に様々な議論が繰り返されてきている。学習コーナーもかなりの広さを誇り、定期試験の直前になると沢山の生徒たちが勉強に訪れる姿を見ることが出来る。在庫整理のために火曜日が休館日。
鏑木グループ Kaburagi financial group
旧財閥系の出自を持つ、日本国内では最大級の企業グループ。重工業を主軸に出発して種々様々な業種へと展開、現在では一大企業グループとしてグローバルな発展を見せている。

鏑木家 the Kaburagi house
聖應女学院を創立した旧鏑木公爵家。旧井佐藩主であったが、偉勲により維新以降も公爵位を与えられて華族となる。以降政界、財界と幅広く活躍し、鏑木財閥・後の鏑木グループを築くこととなる。現当主は鏑木慶行。前作主人公である鏑木(宮小路)瑞穂はその息子である。

御門家 the Mikado house
御門侯爵家。鏑木慶行の妹・鏑木清花が御門家長男である御門公造と結婚し、鏑木と縁続きになった家である。武家時代の主従であり、財閥の時代も鏑木での仕事に従事していた一族である。公造は慶行のとって年上の義弟であり、また仕事上での良き相談相手でもある。ちなみに、公造と清花の二人の間に出来た娘が前回のヒロインである御門まりやである。
一方で公造の弟である御門邦秀は、妃宮公爵家から一人娘である妃宮妙子を迎え入れる。二人の間に産まれたのが本作の主人公である御門(妃宮)千早となる。御門家よりも位の高い妃宮家であったが、もはや爵位などは無用の長物であるという妙子の父・妃宮修一郞の言葉に従って父邦秀は婿入りしなかった。但し妃宮家は維新以降代々外交官の職にあり、邦秀にも家名を継ぐよりもその道を選んで欲しいとの言葉を受けて、邦秀は外交官の道を選んだのである。
聖應女学院年表
年 | 月日 | 記事 |
1886年 | 2月12日 | 聖應女学院 開校 |
---|---|---|
1923年 | 9月1日 | 関東大震災 罹災 本校舎半壊、椿館が火災により倒壊する |
1944年 | 8月 | 集団疎開の開始 学院の運営も一旦休止される |
1945年 | 8月8日 | 空襲により榎館が炎上、倒壊する |
1948年 | 4月1日 | 学制改革により、新制学校として再開 |
1953年 | 4月1日 | 幼等部から短期大学部までの一貫校に |
1981年 | 2月1日 | 新校舎(現在の校舎)落成 |
1983年 | 6月30日 | 宮小路幸穂 第50代エルダーに就任 |
8月3日 | 高島一子 逝去 | |
1984年 | 6月14日 | 鏑木慶行・宮小路幸穂 結婚 |
1990年 | 1月22日 | 宮小路幸穂 逝去 |
1997年 | 9月7日 | 梶浦緋紗子 聖應から転出 |
10月7日 | 長谷川詩織 事故で逝去 | |
1998年 | 4月1日 | 上級音楽教員不足のため音楽特待生制度が廃止される |
2003年 | 4月1日 | 梶浦緋紗子 国語教師として聖應に |
2004年 | 6月30日 | 十条紫苑 第71第 エルダー・シスターに就任 |
2005年 | 5月31日 | 宮小路瑞穂 聖應に転入 |
6月29日 | 宮小路瑞穂 第72代 エルダー・シスターに就任 | |
10月13日 | ”聖應の十月革命” 第98回 生徒総会 | |
2006年 | 2月10日 | 菅原君枝 生徒会長に就任 |
4月1日 | 七々原薫子 聖應に転入 梶浦緋紗子 教師を退職 |
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6月30日 | 菅原君枝 第73代 エルダー・シスターに就任 | |
2007年 | 2月10日 | 上岡由佳里 生徒会長に就任 |
6月28日 | 周防院奏 第74代 エルダー・シスターに就任 | |
9月3日 | 神近香織理が学生寮に中途入寮 | |
10月15日 | 学院長美倉サヱ 職務中に倒れて急遽入院することに 臨時の学院長代理として梶浦緋紗子を指名する |
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2008年 | 2月8日 | 皆瀬初音 生徒会長に就任 |
4月1日 | 妃宮千早 聖應に転入 |